「どうかシッポを振らないでくれ」殺処分を担当する保健所の元職員が想いを綴った文章

現在、日本では、年間約15万頭以上の犬や猫が保健所などの施設に引き取られ、約10万頭が殺処分されているのが現状です。

動物愛護センターや保健所に犬が連れてこられると、その後、飼い主からの連絡を待つ期間が数日間あります。その犬が飼い主とはぐれてしまったペットであれば、飼い主が必死になって探しているかもしれないからです。保健所で犬が保護されているこの期間、犬たちの世話をするのは保健所の職員たちの仕事です。餌をやり、便を片付け、外に出してやったり、頭を撫でてやったり、慣れない場所で犬たちが安心できるようできる限りのことをしてやるそうです。

その待ち期間が終わりを告げると、飼い主からの連絡がなかった犬の中には譲歩されるチャンスが与えられる犬もいます。新しい家族が見つかれば幸いですが、見つからなかった場合、日本ではその犬の命の終わりを意味します。 

毎週、数日間とはいえ、可愛がっていた犬たちを殺処分へと送り出さなければならない職員の心境、「命の終わり」のボタンを押す職員の気持ちを考えたことがありますか?保健所に連れていけばなんとかしてくれる。保健所に動物を持ち込む方々の中には安易に考えている人もいるかもしれません。

こちらは以前Facebook にシェアされ話題となった、保健所で動物の殺処分を担当していた職員の視点から書かれた文章です。 


『金曜日の朝、どうかシッポを振らないでくれ~保健所の現場から~

【私は、金曜日の朝が辛いです。

数日間なれど、飼い主からの連絡を待ちながら、飼い主の代わりに世話をしています。

飼い主を捜したり、餌を与え、便の後片付けをし、日光浴をさせ、頭をなでてやり、限られた時間で出来るだけの情を注いでいます。

情を注げば可愛く思えてきます。

金曜日は殺処分(一部譲渡)するために大分へ犬を運びます。

情をかけた子(犬)を送りだすときの、我々職員の心境を考えてみて下さい。

金曜日の朝、私の心は、こうです。

シッポを振りながら私を見ないでくれ!

「餌の時間かな?」、と疑いのない目で見ないでくれ!

遊ぼうってすり寄らないでくれ!

子(犬)は、殺処分したくない。

憎しみで牙をむいて吠えてくれ。

・・・その方が、私の心は痛まずにすむから。

今から殺処分されるのに・・・親しそうな目で見ないでくれ!

最後の最後まで人間を信じている・・・「俺たちは、お前達を殺処分するんだぞ!」

・・・シッポを振らないでくれ。

私達職員は、胸が締め付けられます。

その時が金曜日です。

「憎しみで吠えられた方が気分が楽になる」

この心境、分かりますか?

保健所に殺処分をゆだねる前に、愛犬との楽しかった時期を思い出してください。

愛犬は、最後の最後まであなたを信じているはずです。

愛犬が粗相をしたとしても、多くの場合、飼い主がしつけを怠ったケースが多く、責任を愛犬になすりつけないで下さい。

犬についての正しい勉強を怠った自分(飼い主)を見つめ直して下さい。】

元 大分県北部保健所 衛生課 生活衛生環境班文:渡辺 徹』

これは、大分県を中心に動物愛護の啓発に取り組むボランティア団体HOME PEANUTSで活動をしている、保健所の元職員、渡辺徹さんによって書かれたものです。渡辺さんが団体とともに主催している「こころの授業」でも教材として採用されています。

「憎しみで吠えられた方が気分が楽になる」という言葉が深く胸に突き刺さります。

迷子のわんこ、身寄りのない猫、病気になったから要らない、言うことを聞かないからいらない、本当に様々な理由で保健所に連れてこられる動物達。人間が連れて行くんです。犬が猫が自分達から進んで保健所いに行っている訳ではない。完全に人間の都合で命を弄ばれる動物達。そして、その命のボタンを押す職員のストレートな心の叫び、痛み、悲しみ。”憎しみで牙を剥いてほしい”、”親しみの目でみないでくれ”そう願わずにいられない職員の苦しみ。

縋るように見つめられ、尻尾を振られ、その全てを振り切って命の終わりのボタンを押すのです。


殺処分ゼロに向けた活動の輪は広がりつつありますが、日本では今でも毎年20万頭以上の犬や猫が保健所に収容され、そのうちの17万頭が無残にも殺処分されています。「引っ越しをするから」などという身勝手な人間の都合で捨てられ、処分されていく命がこんなにもたくさんあるのです。

動物たちは二酸化炭素への耐性が人間よりも強いにも関わらず、殺処分方法は二酸化炭素ガスを用いたガス殺が殆どです。 


安楽死とは何でしょう?人間の都合だけで命を奪う殺人ですよね。他に方法はないのでしょうか?殺してしまう仕事なんて・・・業務放棄でも何でもできませんか?命に寿命はあっても期限なんてありませんよね?

この職員の方はとてもイヤな、しかし誰かがやらなければならないことを仕事とはいえ、なさっています。

空前のペットブームの裏側で幸せになるべき、生きるべき命が処分されていく社会に私たちは生きています。

これが命の尊さや殺処分の現状や命を預かることに責任について改めて考えるきっかけになりますように。殺処分ゼロを切に願っています。

そして今、多くの人が殺処分ゼロに向けた活動に声を上げ、その輪は広がりつつあります。

動物を処分するだけの施設ではなく、動物の命を救うための前向きな取り組みをしている施設もあります。先進国といわれる日本の中でペット産業、及び、動物達を取り巻く環境はとても先進国とは言えない実情。

なぜ、罪のない命が人間のエゴで失わなければならないのか。私達の命と動物達の命、どこに違いがあるのでしょうか。

一度、共に暮らすと決めたら一生責任を持って頂きたい。心から愛してあげてほしい。飼い主さんを信じてくれる気持ちを安易に裏切らないでほしい。

もし、最後まで責任を持つ自信のない方は「飼わない」という決断もできることを知ってほしい。

本当に複雑な事情で一緒に暮らせないとなり、手放すことに涙する人もいるでしょう。ただ、『飼えない→保健所で安楽死』この方法だけではないことを知ってください。

犬や猫を保護し飼育するNPO団体も増えています。しっかりとした施設であれば、愛犬の世話をちゃんと看てくれます、里親も探してくれます。

金曜日の朝、シッポを振られる職員の気持ちが心に突き刺さります。殺処分という悲しい運命を辿る動物達が一日でも早くいなくなることを願わずにいられません。

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