最期の歩行

今日目覚めたら、それが彼らの最後の日になるとは知るはずもない…。
全国のシェルター、すなわち保健所には”最期の歩行”を待つたくさんの犬たちがいます。彼らはそれぞれ、ここに連れて来られるまでの物語を抱えて入ります。でも、シェルターで誰にも望まれない犬たちが最後に辿るのはみんな同じ道、それは殺処分と呼ばれるこの世の地獄。

残念ながらこの写真の犬は、シェルターでの最期の歩行をしている所です。

誰にも望まれなかったこの犬が連れて行かれる先は”殺処分”部屋です。そんな部屋に連れて行かれるなどとは知らない犬は係員の指示に従ってお利口に歩いていきます。

何も悪いことをしていないのに、何故、殺さなければならないのでしょうか?

上記写真の”最期の歩行”をしている犬は、とても大人しい雌犬だったそうです。職員に導かれ、抵抗することもなく、でも、ゆっくりと歩いて行ったそうです。たまたま、ある一般女性がアニマルシェルターに行った時に、この犬が檻から出され職員に連れて行かれる場面に出くわして、その犬の”最期の歩行”を写真に納めたものでした。女性は、職員に尋ねたそうです。「どこに連れて行くのですか?」と。すると職員は、彼女の目を見て「ちょっと後ろの方に。」とだけ答えたそうです。それが何を意味するのかということは、彼女にはすぐにのみ込めました。”殺処分”という運命がそこに待っていることを。

この作業は、たいがい早朝に行われます。まだ、誰も一般の人がシェルターに来ないうちに、誰にも見られないうちに、そっと行われるそうです。なので、トップの写真のような”最期の歩行”を一般人が目にすることはありません。これは、とても残酷な1枚、けれど紛れもない現実をとらえた1枚なのです。こういう作業が全米の(殺処分有の)シェルターで毎朝、行われています。
写真の犬は、その後、殺処分されました。

環境省の発表によると、平成27年度の犬猫の収容数は136,724匹。内訳は46,649匹が犬、90,075匹が猫。

飼い主が連れて来た犬や猫は、20,523匹。内訳は、6,462匹が犬、14,061匹が猫。
所有者不明の犬や猫は、116,201匹。内訳は、犬が40,187匹。76,014匹が猫。

安楽死させられた犬や猫は、82,912匹。内訳は、15,811匹が犬、67,091匹が猫。
里親が決まった犬や猫は、39,109匹。内訳は、16,417匹が犬、22,692匹が猫。
迷い犬、猫たちが飼い主に無事返却された犬や猫は、13,565匹。内訳は13,220匹が犬、345匹が猫。
ちなみに日本の保健所では、殺処分の数が米国と比較すると少ないため、たいていの場合は、週に1回、殺処分されているようです。都道府県によって、殺処分の現状は異なりますが、ある県では推定年齢が8歳以上と判断された犬の場合はどんなに健康で問題がなく人懐こくても、すべて殺処分されるということです。推定年齢が7歳以下と判断され、血液検査などの結果問題なしとされ、人懐こく大人しい犬の場合のみが譲渡対象となっています。しかし、譲渡対象となっている犬は1度に3~5匹までで、それ以上は対象とされないため、皆殺処分されてしまいます。また、犬も猫も、自分で餌が食べれないような子犬、子猫の場合は、職員が世話ができないため、その日のうちに殺処分されてしまうそうです。そして、猫の場合は、殆どが殺処分で、わずかに譲渡対象となる猫は、健康で人懐こい子猫のみです。それも1度に10匹以下のようで、あとは皆殺処分です。ここに来る里親希望者たちは、あまりにも少ない譲渡対象の犬や猫たちに対して、何か月も待っている状態が続いています。里親希望者がいるのに、譲渡対象として出される犬や猫の数が足りておらず、積極的に殺処分されているというこの保健所では、そういうとてもおかしな現象が発生しています。でも、市民たちの多くがその現実を何も知らないまま過ごしています。そして地元のペットショップには、たくさんのかわいい子犬や子猫たちが売られているため、そちらに足が向いてしまっている現状が存在しています。


人の業によって死を与えられる命…

これまで殺処分された多くの犬や猫たちにも、それぞれが抱えていた生命の物語があります。命は、皆、生きるために生まれてきます。ですが、この世の中には人間の業によって殺されるために生まれてくる命をたくさん作り出してしまっている現実が存在しています。健康に生まれてきて、何も人間に悪い行為をしていなくても、人間たちの考える一方的な環境問題や、飼育の為の手間と費用がかかるということで疎んじて捨てられ、挙句の果てに殺されてしまいます。そして、それが判っていても去勢・避妊をせずに放置し、ただ殺される命を作りだしてしまいます。また、殺されている命が途方もなくたくさんあるのに、売るために作り出される命もあり、そしてそれを買う人たちがいます。常にこの矛盾にたどり着いてしまいます。でも、それが矛盾だとは考えていない、あるいは考えることもしない人の方が圧倒的に多いのが今の現実社会です。だから、殺処分される命がなくなることがありません。

小池東京都知事が、2020年までに、ペット殺処分ゼロを目指し、犬や猫の譲渡支援に都の予算をつける考えを示しています。これは、とても画期的な発言でした。このように今、世間から注目を集めている方の発言は、人々に大きく影響を与えます。

しかし、あと4年もあります。それまでに殺処分される命がたくさん生まれてしまうことでしょう。それは死のために生まれる命です。都知事だけが考えるのではなく、日本国民一人一人がこの問題を真剣に考えなければなりません。都知事が、公約を実行するためには数々の手筈を踏まなければならないため、どうしても時間がかかってしまいます。

けれど国民一人一人が殺処分をなくす世の中にするのは、今からでも明日からでもいつからでも実行可能なことなのです…

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