犬猫の販売業者を取り締まる新たな動きは、はたして犬猫の幸せにつながるのか?

犬猫の死亡が基準を上回る販売業者を取り締まる旨が、環境省より全国の都道府県に対して通知されました。このことは、ペット流通の闇に一石を投じることになるのでしょうか? いくつかの問題点から考えてみます。

2016年1月5日、環境省が全国の核市動物愛護管理局長に対し、犬猫の死亡が基準を上回る販売業者を取り締まる旨の通知を出しました。あまりにも高い死亡数を出している業者について、監視と指導を強める目的とされています。下記に簡単に通知をまとめてみました。

「第一種動物取扱業者に対する監視、指導等に対する徹底について」(犬猫等健康安全計画の遵守))

・第一種動物取扱業者

販売・保管・貸出し・訓練・展示・競りあっせん・譲受飼養などを行う業者のことで、販売目的の繁殖業者やペットオークション業者、生体販売を行うペットショップなどが含まれる。登録をせずに業務を営む者は、100万円以下の罰金に処せられる。

・犬猫等健康安全計画

極端に劣悪な環境での飼育や母体を痛めつける過剰な繁殖や、販売困難になった動物の取扱いが不明確といった問題が存在することから、適正な取扱いを確保するため動物販売業者に対して、登録手続きの際に提出が義務づけられている。「飼養する犬猫の健康状態の記録方法」「かかりつけ獣医師名」「仕入れ方法」「販売に適さなくなった犬猫の具体的な譲渡先や連携する愛護団体名」といった記載項目がある。

・死亡率について

犬猫の販売業者が提出を義務づけられている「犬猫等販売業者定期報告届出書」に基づき算定。犬の場合、繁殖業者で5.6%、非繁殖業者で0.8%、全体としては2.6%を全国の平均死亡率とし、今回の通知を受け、これを上回る死亡率の販売業者は取り締まり対象となる。

以上のような通知が出された背景としては、犬を愛する人々なら、今、子犬販売の世界で何が起きているのか、ご存知の方も多いでしょう。親犬が一生を送り販売用の子犬が生み出される劣悪な環境、母胎の負担を無視した過剰な繁殖、遺伝疾患を無視した繁殖、病気の繁殖犬は死ぬまで放置もしくは山野に放棄など、悪質な繁殖業者の存在は社会問題ともなっていますが、子犬のオークション、ペットショップなどペット流通全体に大きな問題があることは、かなり広く知られるようになってきました。「2014年度には年間約75万匹の犬猫が流通しており、そのうち2万3千匹余が繁殖から小売までの流通過程で死亡している」という記事が2015年10月12日号の『アエラ』に掲載され、国内における犬猫の流通量が初めて明らかにされたとして、関心を持つ人々の目を大きく引きつけました。

あまりに多くの犬たちが苦しみ、命が失われている現状において、環境省の出した通知により今後の改善は期待できるのでしょうか。

個人的見解ですが、この通知だけでを見る限り、悪質な繁殖・販売業者に対する直接的な取り締まりは期待できないように思います。というのは、それ以前にメスを入れるべき根本的な問題が手つかずのままだからです。

現在、子犬は生後45日を経過すれば親犬から離して販売ルートに乗せてよいことになっています。しかし、「45日齢というのはちょうど離乳期に当たり、免疫力が低下する不安定な時期。この時期に流通させることに大きな問題がある。早く56日齢規制に移行させるべき」と先掲の『アエラ』の記事中で専門家は指摘しています。現在、多くの有識者が次の動物愛護法改正に向け、八週齢規制に向けて働きかけを続けています。

また、死亡数の報告が自己申告である限り、今回の通知による効果は甚だ疑問です。一体誰が取り締まられると分っていて、正確な数字を報告するでしょうか?無登録の繁殖業者すら存在すると言われています。声を上げることのできない犬猫を、不用になれば闇へ葬るのは雑作もないこと、数字をごまかすのはさらに簡単なことです。性悪説で物事を見るのは好みませんが、可能性としては充分にあり得ることです。行政側が実際に全ての繁殖業者の飼育舎に立ち入り、定期的に調査でもしない限り、より正確な把握は困難であると思われます。業者に義務づけられている「犬猫等健康安全計画」が定められた基準に適さない場合は、登録取り消しや業務停止も定められていますが、誰が見ても悪臭紛々たる不衛生なペットショップですら、容易には廃業されない事実があることを考えると、なおさら疑問に思わざるを得ません。

不衛生なペットショップがあまりに劣悪な環境のため、繁殖業者から引き出される保護犬たちは、どの犬も本当にひどい状態です。帝王切開の傷跡やケガを放置されて化膿や壊死している、歯周病でアゴが溶けたり目の下に穴が空いている、心臓病や腫瘍が進行している、奇形など先天的疾患が放置されている犬たちが山のようにいます。

個人や団体の保護活動者によって、ようやく明るい太陽のもとに引き出されても、搬送の途中で命を落としたり治療の甲斐なく死亡する犬も少なくありません。また、ペットショップから購入したとしても、先天的疾患を持っていることは少なからずあり、購入直後ならともかく、家庭犬として一定期間を経てから死亡した場合は、「病気」「寿命」で片付けるしかないのが現実です。繁殖業者から保護した犬であれペットショップから購入した犬であれ、その死に対する責任は大元をたどれば明らかですが、保護や流通の過程でどんどん不明瞭になっていかざるを得ず、これらの死亡した犬の数は把握されないまま埋もれていくほかありません。

2015年、環境省では悪質な繁殖業者の排除につなげるため、新たな規制を議論する有識者検討会を立ち上げる旨の発表をしています。

今回の犬猫の死亡率による販売業者の取り締まりに関する通知も、そうした動きの一環なのでしょう。

これについて、実際に悪質な販売業の内側を知る保護活動者たちは「単なるガス抜き」と冷笑的です。現状のペット流通を温存しつつ、あいまいな部分を残しながら少しずつ手を入れようとする行政と、生きるか死ぬかの犬たちに常に直面している保護活動者たちとの間には、現実において相当な温度差があります。行政はいつまでたってもストレートに問題の根幹に切り込まない、ペット流通の闇を知ってか知らずか、まだまだ多くの人がペットショップから子犬を購入する、このままでは本当に終らない、そのためには事実を知る人々が、まだ知らない人達に対して啓蒙していくしかないと、保護活動の現場も積極的な活動へと動き出しています。

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